■ベトナム株のビングループ【VIC】の株価推移・配当・今後の見通しは?(20年3月更新)
こんにちは、ベトナム株、タイ株により不労所得形成・配当生活の実現を「気長に気楽に」目指すうみがめベトナム株調査部です。ツイッターにて更新をお知らせしますので、是非フォローお願いします:Follow @umigamen1
・ベトナム株式市場で最も時価総額が大きいビングループはどんな会社なのか?
・ビングループの株価の推移や今後の見通しはどうなのか?
・ビングループはどれくらい配当を払っているのか?(ちなみに過去はほぼ現金配当を払っていないです)
等を見ていきたいと思います。
■ビングループの配当・配当利回り
まずベトナム株投資家の関心が高い配当ですが、2019年12月3日時点で、これまでの現金配当は2014年の1度のみです。
2014:2149ドン
一方で株式配当は12年、14年、15年、16年、18年と過去幾度もやってきました。SBI証券では株式配当は現金で振り込まれます。
還元方針としては、配当ではなく、成長投資に回して、株価上昇・キャピタルゲインを優先している印象です。
なので配当・インカムゲインというよりはキャピタルゲインを目的に投資する株です。
■ビングループの概要:不動産を核に製造業へ拡大するベトナムのトップ企業
ビングループ(Vingroup Joint Stock Company、VIC)は、昔はTechnocom Corporationという企業名で、1993年にウクライナにてベトナム人によって設立されました。
一言で表現するのであれば、不動産を根幹に製造業・サービス業に幅広く事業を展開している企業です。同社のエコシステム・グループ企業は
①不動産、(全体売上の70%弱)
②ホテル・レジャー、(全体売上の5%程度)
③小売、(全体売上の15%程度)*2019年12月に小売事業はマサングループと統合することに同意しています。
④産業、
⑤テクノロジー、
⑥ヘルスケア、
⑦教育、⑧農業
の8分野で事業を展開しています。現状の売上はほとんど不動産から来ています。より大きな括りとしてはテクノロジー、産業、不動産、の3つの分野をメインターゲットとしています。
事業により子会社があり、そのいくつかは上場しています。
例えば住宅不動産を手がけるVinhomes、
加えてヘルスケア分野のVinfa/Vinmec、
等幅広い事業分野でグループ企業を持っております。ベトナム経済の拡大に沿って需要の拡大が期待できる企業です。
ホームページを見ると「テクノロジー・産業/製造業」を「不動産」・「サービス」と同列に扱っています。もちろん現状のグループ会社は不動産・サービスがほとんどですが、今後はテクノロジーや製造業の方面を拡大したい点がわかります。
グループ企業のVINFASTはベトナム初の国産車メーカーとしてチャレンジしてますね。
また航空分野にも進出しています。19年には運輸省がビングループの航空会社Vinpearl Airを承認しました。運行開始は2020年6月で、 6機でスタートの計画です。初期投資はおおよそ200億円強となりそうです。
今後毎年飛行機の数を増やし、2025年までに36機を投入し、国内線・国際線の両方の運行を目指すとのことです。またVinpearl AirはNoi Bai(ハノイ)を主要拠点とするそうです。
■小売事業はマサングループと統合
19年12月にビングループが小売事業をマサングループに売却することに同意しました。
ビングループの小売事業のビンコマース(VinCommerce)とビンエコ(VinEco)が、マサングループの小売部門であるマサンコンシューマーホールディングスに統合されます。統合後はマサンコンシューマーホールディングスが経営を主導します。ビングループはビンコマースを譲渡する代わりに、新会社のステークホルダーとなります。
マサングループによって経営される新会社は、50都市で計2600店舗にのぼるVinMart(スーパマーケット)及びVinMart+(コンビニ)のネットワークと数百万人の顧客基盤を引き継ぎます。
■ビングループのマネジメント
同社のCEO・代表取締役はMr. Pham Nhat Vuongです。Mr. Pham Nhat VuongはVincomやVinpearlといったビングループのコアブランドを立ち上げました。2012年にはベトナム人としてはじめてビリオネアーとしてForbes誌から認定されました。
いまでも最もお金持ちなベトナム人の一人です。
■ビングループの株価推移・外国人保有率(20年3月更新)
下記がビングループの過去5年の株価です。
2017年1月の株価は35,000ドンでしたが、それが今では105,400です。
3年弱で3倍程度となっています。多くのベトナム株がピークアウトした18年以降もしっかりと伸びている点はさすがです。
19年9月の時価総額はおおよそ1兆8500億円です。ベトナムの株式市場ではトップですね。1兆8500億円は日本の株式市場の中にいれても100位くらいです。ちなみに日本の企業で1兆8500億円に近いのは、キリンホールディングス、塩野義製薬、富士通、等があります(19年9月時点)。
本当にベトナムのトップ企業に将来的にも君臨し続けるのであれば、まだまだポテンシャルはありそうですね。日本のトップはご案内の通りトヨタ自動車で24兆円あります。
外国人保有率は15%ですので、問題なく買えそうです。
■ビングループの業績の推移
ビングループの業績推移を見ていきたいと思います。
まずは年ベースの業績推移です。ちなみにIRページは今までみたベトナム企業の中で一番充実しており、軽く感動しました。
以下が左から売上、粗利、EBITDA、税後利益の16年→19年への推移になります。売上の年平均成長率は30%を超えており、非常に高い成長率を持続させています。
売上を主要部門別でわけた図表が以下になります。①不動産、②リース、③ツーリズム・エンターテイメント、④ヘルスケア、⑤教育、⑥製造業となっています。
不動産が減少しているのとをその他の事業で補っているのがわかります。また⑥の製造業は売上が急速に上がっているのがわかります。近年力を入れ始めたスマホや自動車分野と思われます。
車は4Q決算発表時点で1万9400台の累計オーダーを獲得しているとしています。
上記を利益(粗利)でみたものが以下になります。不動産やリースの粗利が高い点が確認できます。一方⑥製造業はNM(not meaningful)としており、その理由としては車の出荷が始まったのは19年7−9月期としています。
車・スマホが利益を生み出すと非常に面白いので、ここの数値は要チェックですね。
■ビングループの四半期業績
継いて四半期ベースの業績推移です。
●19年10−12月期:前年比で売上・粗利はほぼ横ばい。営業利益以下は増益
19年10-12月期は売上や粗利は前年と大差なかった一方、営業利益以下は増益となっています。販管費を抑えています。Industrial部門の売上が急拡大しています。ここが利益を稼ぐと面白いので今後の進捗を要チェックです。
●19年7−9月期:順調な事業環境が継続しているみたいです。
・19年7-9月期の売上は前年比35%上昇。1-9ヶ月累計では10%増加
・その内半分以上がリカーリング売上です。リカーリング売上は前年比で62%増加しています
・19年7-9月期EBITDAは前年比で24%増加。1-9月期では34%増加しています
・売上の伸びに対して若干利益の伸びが小さいですが、まだまだ成長のための先行投資フェーズなので、小さいことは気にしなくていいと思います
■ビングループのバリュエーション
ちなみにバリュエーションですが、VietstockのPER(終わった年度ベース)は96倍、PBRは3.1倍です。今期に業績改善すればもう少し安いかもしれないですが、PERは高いですね。
ちなみに以前紹介した日本のベトナム株投資信託(DIAMベトナム株式ファンドや東京海上ベトナム株式ファンド)でのウエイトは、DIAMで3番目に大きい7%、東京海上では2番目い大きい8%でした(記事で引用したデータの時点)。
時価総額トップ企業がこれだけアウトパフォームすると、機関投資家はバリュエーションに関わらず買う必要がでます。
■終わりに:バブルか?圧倒的成長の序章か?
ビングループの概要・業績・配当・株価について見てみました。サマリーとしては以下がポイントだと思います。
・不動産を核に他の業種へ展開していく戦略で、売上は今後も高成長が継続しそう
・製造業やテック分野への先行投資もあり、利益は足元減少傾向。グローバル企業と競争が激化する製造業シフトで、利益率は中期的に下がる方向性に見える
・一方、株価パフォーマンスは圧倒的。仮に株価が売上成長率を評価するなら、同様のトレンドが続くかも。時価総額が大きいというのも外人が買いやすく、安心がある。
圧倒的な株価パフォーマンスはさすがです。配当は期待できませんが、もし圧倒的な株価パフォーマンスが続くのであれば十分ですね。
事業モデルとしては売上の70%を占める不動産からの安定したキャッシュを他の分野(製造業・テック)に回して成長を図る戦略です。
それが当たれば5年後~10年後には
「三菱地所+三菱自動車+三菱電機」
を足し合わせた様な企業になっているかもしれません。
また、仮にクラウド・データ分野・ECで成功する場合は、上記に加えて楽天的な要素が加わるかもしれません。
ベトナムの三菱財閥と表現するのは少し間違うかな、と思うのは、ビングループという「これから形づくられていく財閥」は、「戦前にできて今に至る財閥」とは全く違う姿になる可能性があるのかな、とも考えています。
社会主義国家や新興国の財閥企業・コングロマリットは参入障壁に守られ、かつグローバルで戦うために国内でも甘やかされるケースがあり、今後も規模がかなり大きくなる可能性があります。
この観点からは非常に面白いです!どんな最終形態になるか楽しみです。
一方で、バリュエーションは高いです。なので売上成長に利益が全くついてこない、となると振り返るとあのときの期待はバブルであった、ということになるでしょう。
ベトナム経済の成長を考えると、売上の増加トレンドはなかなか衰えなそうですが・・・
経済成長ステージにあるベトナムならではの株ですね・・・非常に面白い企業です。
色々書きましたが、結論としては、投資対象に入れたい銘柄の1つとしたいと思います。もっと調査をしたいと思います。
外国株投資はまずどんな企業があるか知ることから。ベトナム含むASEANの有力企業を学ぶのには「ASEAN企業地図」がおすすめです。
- 別サイトにて有望そうな日本株中小型株も調査しています。是非ご覧ください。「大化けするかも?中小型株調査部」(別サイト)
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